リンパ浮腫とは
浮腫(=むくみ)とは、身体の循環器系統に障害が起こり体液が皮下組織に溜まった状態のことを指します。
その中でもリンパ管に障害が起こり、リンパ液が皮下組織に異常に溜まったものがリンパ浮腫です。一般的に浮腫は両側性に出現することが多いですが、リンパ浮腫は片側の手あるいは足(場合によっては陰部や腹部など)がむくむことが特徴です。
リンパ浮腫の原因
では、どうしてリンパ管に障害が起きるのでしょうか。代表的な原因としては以下が挙げられます。
- リンパ節郭清術(鼠径部、骨盤腔内、腋窩など)
- 放射線照射
- 進行がん、リンパ管内やリンパ管を圧迫する腫瘍
- タキサン系薬剤などによる化学療法
- リンパ嚢胞
- 血栓性静脈炎や慢性静脈不全など静脈の病気 など
- 先天的な原因
リンパ節郭清術とは、がんなどの手術の際にリンパ節を切除することを指します。上記を見ていただくとわかるように、がんやがん治療の後遺症としてリンパ浮腫が発症することがわかります。特に女性の特有の乳がん・子宮がん・卵巣がん、男性特有の前立腺がんではがん病巣の近くにあるリンパ節を手術で切除することが多く、その後遺症としてリンパ浮腫を発症することが多くあります。
リンパ浮腫の症状
- むくみ、だるさ、重さ、疲労感
- 線維化
- 脂肪組織の肥大
- 皮膚の乾燥
- 皮膚の角化、硬化、象皮症
- 多毛症
- 色調変化
- 無痛
一般的にリンパ浮腫は痛みを伴いません。しかし、浮腫があまりにも強くなると組織の中にリンパ液が溜まりすぎるために皮下組織内部の圧力が上昇し、痛みが出現することがあります。(緊満痛:きんまんつう)
また、むくみを長期間放置することで皮膚が固くなったり乾燥し、像の皮膚のようになる症状(象皮症)が出現することもあります。
このような症状にならないためにも、毎日のスキンケアはとても大切なものになります。
リンパ浮腫の発症時期
リンパ浮腫の発症時期は特に決まっていません。
リンパ節郭清術後、数日で発症する方もいらっしゃれば術後10年で発症する方もいらっしゃいます。発症のきっかけとしては、重いものを持ったとき、疲れが溜まったとき、激しい運動を行ったときなど様々のようです。例えば以前私が担当していた利用者さまは、乳がん術後10年経った時にお孫さんとアスレチックへ行き、ターザンロープで遊んだことをきっかけに浮腫が発症したとおっしゃっていました。発症のきっかけとして挙げたものは浮腫発症後も浮腫の増悪原因となっています。日頃より休息をしっかりととり、疲れを溜めすぎない様に過ごしましょう。
リンパ浮腫の合併症
ここでは現場でよく見かける代表的なものを3つ挙げます。
- 蜂窩織炎(ほうかしきえん)
皮下組織の広範囲の急性炎症のことを言います。リンパ浮腫患者の半数以上が経験する可能性のある合併症とされています。浮腫が出現している皮膚に発赤が現れ、皮膚に熱や痛みを持つだけでなく38℃以上の高熱が出ることがあります。悪寒や全身の震えのあとに熱が上がることが多いようです。このような症状が出た場合は必ず病院を受診し、抗生物質を投与してもらう必要があります。重症の場合は2週間ほど入院する場合もあります。細菌感染や過度な肉体労働、疲労などで免疫が低下した際に発症することが多いため、日常からしっかりと休息を取ることを心がけましょう。 - リンパ小疱(しょうほう)
リンパ液が皮膚表面に押し出されて小さな小疱を形成したもの。見た目はイボのようなものです。皮膚の柔らかいところでよく見られます。 - リンパ漏(ろう)
リンパ小疱が破れて外へリンパ液が漏れ出た状態を言います。蜂窩織炎などの感染症を引き起こすことがあるため注意が必要です。患部の清潔を保ち、包帯などで皮膚を圧迫して浮腫を改善することで快方に向かいます。
次回はセルフケアをするために必要な「身体の知識」についてお話します。