リンパ浮腫のセルフケア
リンパ浮腫に必要なセルフケアは4つあります。
- スキンケア
- マッサージ
- 圧迫
- 圧迫下での運動
まず、なぜリンパ浮腫にはセルフケアが必要なのか書きたいと思います。
リンパ浮腫は、リンパ管やリンパ節に障害が起きリンパ液が適切に排出できない状態です。そのため、一度リンパ浮腫を発症すると24時間絶え間なくリンパ液が皮下組織へ漏れ出る状態になります。(個人差はあります)病院などでマッサージを受けても、一時的に緩和しますが時間が経てばどうしても元に戻ってしまいます。
そのため、一日一日の皆さんのケアの積み重ねが「安定した健康状態で毎日を過ごす」ことに繋がる重要なものとなります。
それでは一つずつ解説していきたいと思います。
リンパ浮腫のスキンケア
前のブログで触れましたが、リンパ浮腫の合併症に皮膚の角化、線維化などをあげました。重度になってくると象の皮膚のようになる象皮症に進行していきます。リンパ浮腫は皮膚が乾燥しやすく、また、皮膚が固くなるとリンパ液の排液がさらに滞り悪循環が生じます。乾燥によってもたらされるものはそれだけでなく、感染症の併発へも繋がります。
そのため皮膚を潤わせ、柔らかく保つことが最初に重要なポイントです。
お風呂の後など、乾燥に気づいたときはそのままにせずしっかりとボディクリームで保湿をしていきましょう。
一般的にニベアやキュレルのボディークリームが使用する方が多いです。ご自身の皮膚にあったものを選びましょう。
リンパ浮腫のマッサージ
皮下組織に溜まったリンパ液をなるべく早く排出させるためにマッサージを行います。
マッサージを行う上で大切なことは下記2点です。
- 正しい方向に流す
リンパ液は流れる方向が決まっています。(詳細は前回ブログ、こちらへ)
そのため、流れる方向と逆方向に流してしまうと逆効果になってしまいます。
しっかりと流れる方向を確認し、意識して流すことが大切です。 - 正しい圧で流す
リンパ液が貯まる場所は皮下組織(=皮膚の下の脂肪がある場所)とお伝えしました。
特に手足においてはその皮下組織を流れるリンパ管が8〜9割のリンパ液の排出を担っています。そのため、ご自身でマッサージを行う場合はこの皮下組織を意識した圧でマッサージすることが大切です。
むくみの重症度によってむくみの厚さが少ない方・多い方がいらっしゃいます。むくみが強い方については少し強めの圧が効果的ですので、ご自身のむくみの厚さ(=脂肪の厚さ)を意識してマッサージすることをおすすめします。
なお、マッサージの部位を強くこすったり押したりすることでリンパ管が破壊され、むくみが悪化するリスクがあります。強さには注意してマッサージしましょう。
リンパ浮腫の圧迫
圧迫は非常に大事なセルフケアとなります。
ご自身の皮膚をつまんで引っ張り上げると皮膚が伸びると思います。空気を入れると膨らむ風船と同じで、リンパ浮腫ではこの皮膚が伸びる容量の分だけリンパ液を皮下組織に貯めることができます。何もせずに今の皮膚の状態にしていたら、皮膚が伸びる分だけどんどんとリンパ液が溜まっていくのです。
そのため、皮膚に圧迫をかけ、今以上に皮膚を伸ばさないようにするのがリンパ浮腫悪化の予防につながります。具体的な方法としては以下の2点があります。
- 包帯を巻く
リンパ浮腫用の包帯をリンパ浮腫の部位に巻く方法です。メリットとしては、ご自身で巻く圧力を調整できるので、より効果的にむくみを緩和することができます。デメリットとしては包帯を巻く工程が多いため、時間と手間を要します。 - 弾性着衣を装着する
リンパ浮腫用に開発されたスリーブやストッキングです。メリットとしては、腕や足を通すだけのものなので包帯と比べて簡単に圧迫をかけることができます。デメリットとしては自分で圧の調整ができないので部分的なむくみのケアができないことが挙げられます。
いずれも医療保険の適用対象となっています。主治医やリンパ浮腫外来の医師へ相談をして処方してもらいましょう。
リンパ浮腫の圧迫下での運動
皮膚に圧迫した状態で運動をすると、より効果的にリンパ液の排出を促すことができます。
リンパ管は1分間に約10〜15回収縮をしてリンパ液を運びますが、外からの刺激によってその収縮をより多くすることが可能です。その一つが運動です。
例えば、お庭で植物に水やりをする時にホースを使ったとします。ホースを指で抑えると水が勢いよく出るのは皆さん経験の中でご存知だと思います。リンパ管も同じ原理で、外からリンパ管が押されるとリンパ液が押し出されます。この時に押し出す役目を担うのが筋肉です。
運動と一概にいっても何をすればいいだろう、と思う方もいらっしゃると思いますが、筋肉を動かせばOKです。筋肉を動かすこととは?といえば、簡単に言うと関節を動かすことです。手がむくんでいれば手首・肘の曲げ伸ばしをしたり肩を回す、足がむくんでいれば足首・膝・股関節の曲げ伸ばしをすればOKです。ただ運動強度が強くなりすぎると循環が良くなりすぎてむくみが悪化するため、やりすぎには注意が必要です。
よく、どれくらいやれば良いですか?と質問されることがあるのですが、こればかりは本当に個人差があります。運動回数や強度についてはご自身の経験の中でここまでなら大丈夫、という目安を作っていくことが何より大切と考えます。
今回は4つのセルフケアについてお話させていただきました。今後はセルフマッサージの方法についてより具体的にお伝えしていきます。